精神医療問題

統合失調症の発病率

「100人に1人がかかる」のからくり


公開:2017年11月2日、更新:20--年--月--日

「統合失調症は100人に1人がかかる」と聞くと、発病率が非常に高い病気であるという印象を受けます。本当にそうでしょうか、検証してみましょう。

 

注:他に書いたものに加筆修正したため、人口等が最新のデータではありません。

 

1. 統合失調症とは

 

 「統合失調症は100人に1人がかかる」とか、「統合失調症は、発病者が非常に多く、ありふれた病気である」と、啓蒙活動が行われています。どんな印象を受けますか?。もしかして、統合失調症は、1年間に100人に1人が発病するのでしょうか?、厚生労働省のデータを使って検証してみます。

 

 最初に、統合失調症の概要と、人口統計を確認します。

 

● 統合失調症とは

 

厚生労働省 > みんなのメンタルヘルス > 専門的な情報 > 疾患の詳細 > 統合失調症

 

統合失調症

 

統合失調症は、およそ100人に1人弱がかかる頻度の高い病気です。

 

(中略)

 

◎ 患者数

 

厚生労働省による調査では、ある1日に統合失調症あるいはそれに近い診断名で日本の医療機関を受診している患者数が25.3万人で(入院18.7万人、外来6.6万人)、そこから推計した受診中の患者数は79.5万人とされています(2008年患者調査)。

 

受診していない方も含めて、統合失調症がどのくらいの数に上るかについては、とくに日本では十分な調査がありません。世界各国からの報告をまとめると、生涯のうちに統合失調症にかかるのは人口の0.7%(0.3~2.0%;生涯罹患率)、ある一時点で統合失調症にかかっているのは人口の0.46%(0.19~1.0%;時点有病率)、1年間の新たな発症が人口10万人あたり15人(8~40人)とされています。

 

発症は、思春期から青年期という10歳代後半から30歳代が多い病気です。中学生以下の発症は少なく、40歳以降にも減っていき、10歳代後半から20歳代にピークがあります。
発症の頻度に大きな男女差はないとされてきましたが、診断基準に基づいて狭く診断した最近の報告では、男:女=1.4:1で男性に多いとされています。男性よりも女性の発症年齢は遅めです。

 

(後略)

 

● 生涯罹患率

 

 上記データより、生涯罹患率は 0.7%(0.3~2.0%)です。生まれてから死ぬまでの間に、統合失調症にかかる確率は、1,000人当たり7人(3人~20人)です。100人当たりにすると0.7人、整数にすると1人です。「100人に1人がかかる」になります。

 

● 日本の平均寿命

 

 生まれてから死ぬまで、何年生きるのでしょうか?、厚生労働省サイトの平均寿命(0歳の平均余命)を見ます。

 

厚生労働省 > 平成25年簡易生命表の概況

 

厚生労働省 > 平成25年簡易生命表の概況 > 主な年齢の平均余命(PDFファイル)

 

2013年(平成25年)のデータでは、男性 80.21歳、女性 86.61歳です。日本人としての平均寿命は、83歳です(計算しやすくする為、小数点以下を四捨五入)。

 

● 日本の人口

 

 総務省統計局のデータを見ます。

 

総務省統計局 > 統計データ > ・・・ > 人口推計(平成25年10月1日現在)

 

2013年(平成25年)のデータでは、総人口 1億2730万人、男性 6,191万人、女性 6,539万人です。

 

2. 100人に1人の確率

 

 100人に1人=1% と言う確率に近いものは何でしょうか?。国土交通省の資料によると、1年間に交通事故に遭う確率が 0.9% です。

 

一生のうち交通事故に遭う確率は何%? (交通事故慰謝料協会 > 交通事故全般、2013年9月8日)

 

交通事故全般

一生のうち交通事故に遭う確率は何%?

2013年9月8日

 

国土交通省が新たな道路政策を諮問した社会資本整備審議会の会議の場で、こんなユニークな資料が示されました。「人生で交通事故にあう人は、2人に1人」資料を提供したのは国交省です。年間の交通事故死傷者数(118万人)を日本の総人口(1億2692万人)で割った「1年間で事故にあう確率」を0.9%と算出。

 

(1-118万人/1億2692万人)で「1年間に事故にあわない確率」を出し、一生を80年と仮定し、「1年間に事故に遭わない確率」を1から引いて80乗したそうです。そして、その結果は53%。ということで、「人生で交通事故に遭う人は2人に1人」もちろん、あくまでも「確率」ですから、わずか1年のうちに2回の交通事故に遭う不幸な人もいれば、一生涯交通事故に遭うこともない人もいるわけです。

(後略)

 

 「1年間に交通事故に遭う割合」と、「生涯で統合失調症にかかる割合」は、100人に1人でほぼ同じです。しかし、交通事故に遭う確率は、1年間に100人に1人(0.93%)です。生涯になおすと、2人に1人が交通事故に遭う事になります。統合失調症にかかる確率は、生涯(83年)で100人に1人です。交通事故と同じように、1年間に統合失調症にかかる確率を計算してみます。

 

 なお、統計が全て正しい訳ではありません。統計計算を行なう目的をどう設定するか、計算方法をどうするか、結果をどのように解釈するか、それらによって、結論が違ってきます。正反対になる事もあります。統計を上手に利用すれば、正確な分析ができますが、騙されないように注意が必要です。

 

3. 生涯罹患率から計算

 

 国土交通省が行なったのと同じように、生涯に統合失調症にかからなかった確率を出し、1年当たりの確率を求めます。

 

● 計算

  1. 生涯罹患率が0.7%です。
  2. 生涯に罹患しない確率は、1-0.007=0.993 (99.3%)です。
  3. 平均寿命83歳なので、0.993の83乗根を求めます。(累乗根は関数電卓で計算)
    83√0.993=0.9999154
  4. 1年間に、統合失調症に罹患しない確率は、99.99154%です。
  5. 1年間に統合失調症に罹患する確率、年間罹患率は、1-0.99991537=0.0000846です。10万人当たり9人が罹患。
  6. 1年間に罹患する割合は、1÷0.0000846=11,820人。約1万2千人に1人が罹患。
  7. 日本で1年間に罹患するのは、総人口1億2730万人×0.0000846=10,770人。約1万1千人が罹患。

● 結論

  • 1年間に10万人当たり9人が発病。
  • 1年間に1万2千人に1人が発病。
  • 日本全体では、1年間に1万1千人が発病。

 

4. 発症の確率

 

 現実問題として、もうひとつ、問題があります。統合失調症の発病は、一生に1回とは限りません。治癒した後、数年~10年以上経ってから再発する事があります。再発しない人もいますし、何回も再発する人もいます。仮定条件を、2回発症(初回+再発1回)と、4回発症(初回+再発3回)として、計算してみます。前項の年間罹患率と区別する為、年間発症率とします。

 

● 計算(発症2回)

  1. 生涯罹患率が0.7%、発症が2回なので、生涯の発症率は0.7×2=1.4%です。
  2. 平均寿命83歳まで発症率を一定とすれば、年間発症率は0.014÷83=0.0001687です。10万人当たり17人が発症。
  3. 1年間に発症する割合は、1÷0.0001687=5,929人。約6千人に1人が発症。
  4. 日本で1年間に発症するのは、総人口1億2730万人×0.0001687=21,476人。約2万1千人が発症

● 結論(発症2回)

  • 1年間に10万人当たり17人が発症。
  • 1年間に6千人に1人が発症。
  • 日本全体では、1年間に2万1千人が発症。

● 結論(発症4回)

 

生涯の発症回数を4回(初回+再発3回)として、同様に計算します。結論だけ記します。

  • 1年間に10万人当たり34人が発症。
  • 1年間に3千人に1人が発症。
  • 日本全体では、1年間に4万3千人が発症。

 

5. 印象操作

 

● 検証

 

 引用した厚生労働省のデータによると、「1年間の新たな発症が人口10万人当たり15人(8~40人)」、「1年間の発症は7千人に1人(12,500人~2,500人に1人)」です。

 

 今回行なった生涯罹患率と4回発症の計算結果によると、「1年間の発症は10万人当たり9~34人」、「1年間の発症は1万2千人~3千人に1人」です。厚生労働省のデータとほぼ同じ結果になりました。

 

● 印象操作の理由

 

 「統合失調症は100人に1人がかかる」から受ける印象と、今回の計算結果は大きく異なります。生涯罹患率から計算すると、1年間に10万人当たり9人、1万2千人に1人が発病するだけです。仮定条件を、生涯に4回発症(初回+再発3回)と増やしても、1年間に10万人当たり34人、3千人に1人が発症するだけです。

 

 精神科医や製薬会社は、「統合失調症は一生治らない病気であり、症状を治療でおさえるだけ」と説明しています。その場合、発症は生涯で1回だけですから、生涯罹患率から計算した結果になります。データの不整合が大きくなります。

何の為に、「100人に1人がかかる」として、発病率の高さを印象付けるような説明(宣伝)をするのでしょうか?。誰が得をするのでしょうか?、そう考えてみるべきかもしれません。